鳥取和牛、県がブランド向上後押し 「霜降り肉」研究進む 旅行サイトでも特集 - 日本経済新聞

鳥取和牛、県がブランド向上後押し 「霜降り肉」研究進む 旅行サイトでも特集 (日本経済新聞
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 鳥取県が注力する「鳥取和牛」のブランド化が進展している。2017年の全国品評会で県の主力種雄牛の子牛が肉質日本一に輝いたが、それを上回る肉質を生む可能性を持つ種雄牛の育成に県畜産試験場が成功。遺伝子解析で優秀な牛の繁殖を目指す研究棟も新設する。県は旅行サイトを通じた情報発信や東京の一流ホテルとコラボしたメニューの提供などPRも強化する。
 「神経質なところがあるが、顔立ちがかわいいでしょ」。同試験場の岩尾健・育種改良研究室長は鳥取和牛のホープ「隆福也(たかふくなり)」に期待の目を注ぐ。どっしり丸みのある体が印象的だ。触ってみると、驚くほど柔らかな感触が体温を通して伝わってくる。「その柔らかさが良質な霜降りの証し」(岩尾室長)という。
 13年生まれの隆福也の父は鹿児島県のブランド和牛「隆之国」、母は鳥取市の「ふくふく」。14年に同試験場が種雄牛候補として購入した。隆福也を父として生まれた16頭の肉質を調べたところ、霜降りの程度を示す指標となるBMSの値が平均で9.7を記録。宮城県の「茂福久」の10.9、長崎県の「勝乃幸」の9.9に次ぐ国内3位となった。
 隆福也のスコアは鳥取県の主力種雄牛「白鵬85の3」の9.6を超す。白鵬の子の肉は17年9月の全国和牛能力共進会の7区(総合評価群)肉牛群で日本一になった。白鵬は県内の生産者だけが繁殖に利用できる柱の種雄牛。その白鵬を上回る成績に県内関係者の期待も高まっている。
 県試験場はBMS値が9を超す種雄牛を2頭保有するが、いずれも父の血縁が近い同系統。遠い血縁の隆福也は繁殖による近親交配のリスクが少ないため、繁殖の可能性を広げる存在となる。
 試験場には18年度に遺伝子情報の解析を通じて繁殖レベルを高める研究施設が完成する。県は17年度補正予算に事業費4億9000万円計上。遺伝子情報を評価する機器を都道府県で初めて独自に購入し、新たな牛舎も整備する。
 機器の導入で、遺伝子情報から良質な肉を生み出す可能性を評価する「ゲノム育種価」という手法が県独自に展開できるようになる。数年を要する生育を待たないで種雄牛候補としての適否などを判断できるため、繁殖研究のスピード化が図れる。岩尾室長は「ゲノム研究の先進県として、繁殖研究や霜降りだけでなく、良質な赤身肉などうまみの強い肉の研究も進めたい」と話す。
 県は鳥取和牛の情報発信も強化する。関連の観光振興やブランド化の事業費として18年度予算に約2800万円を計上した。旅行情報サイト「じゃらんnet」では6~8月末まで鳥取和牛の特集ページを開設。鳥取和牛を食事として提供する県内の宿泊施設を検索できる仕組みを始めた。
 県の売り込みでホテルニューオータニ(東京・千代田)との連携も始まった。ホテル内の飲食店で6~8月末まで、鳥取和牛をメニューとして提供するフェアを展開している。食のみやこ推進課の塗師木太一課長は「鳥取和牛のブランド向上を図り、観光誘致にもつなげたい」と話す。